DCFのパラドックス〜巨大企業ほど振れ幅が出にくい理由〜

こんにちは、SHOです。

今日は投資指標の中でも「なんとなく大事そうやけど、いまいち腹落ちしてへん」という人が多いDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)について書いてみようと思います。

■ DCFってそもそも何?

一言でいうと「会社が将来生み出すお金を、今の価値に割り引いて逆算する」手法、理論的には最も「正しい」企業価値評価法とされてますねん。

数式とかは正直この記事では脇に置いときます。それより大事なんは「なんでDCFって難しいんやろ?」ってところやと思うんですよね。

■ 安定企業なら計算しやすい、はずやった

DCFが機能しやすいんは、将来のキャッシュフローが読みやすい企業ですねん。
事業モデルが「完成形」に近くて、既存事業の延長線上で未来を予測できるタイプ。
アップルやマクドナルド、任天堂みたいな企業がそれに近いですね。

「iPhoneが毎年これくらい売れて、サービス収益がこれくらい伸びて…」みたいに、線を引きやすい。
任天堂も新ハード投資はあるけど、基本は既存IPを活用した緩やかな拡張やから、予測のブレ幅は比較的小さいことが多いんですわ。

■ でも「規模」だけでは語れへん

最近注目している、ORA(地熱発電)みたいな公益系企業は「安定してるからDCFが効きやすい」と思ってたんですが、これちょっと甘かったです。

ORAは今、データセンター向けの電源として積極的にM&Aや設備投資を仕掛けてます。地熱の会社からデータセンター電源の会社へ、まさに転換点にいる、こうなると将来キャッシュフローの予測は一気に難しくなります。

つまりDCFが効きにくいかどうかを分けるんは、「企業規模の大小」やなくて「事業の転換点にいるかどうか」なんとちゃうかなと。
大企業やから安定、というのは罠で、ブロードコムやORAみたいに「大企業でも転換期は読みにくい」パターンがあるわけです。

■ ブロードコムのパラドックス

ここで面白いんがブロードコムです。M&A巧者として知られていて、VMware買収(600億ドル規模)みたいなデカい一手が入ると、将来キャッシュフローの予測は大きくブレてCFの弱点がモロに出るタイプの企業やと言えます。

ただ、ブロードコムの時価総額はもう1兆ドルを超えてます。株価に目に見える影響を与えるレベルの買収となると、数百億ドル規模が必要になってくる。そうなると、

・独禁法のハードルが一気に上がる
クアルコム買収(2018年)がCFIUS(対米外国投資委員会)絡みで頓挫したように、規模がデカくなるほど米・EU・中国それぞれの審査が絡んで、そもそも買える相手の選択肢が狭まります。

・「振れ幅を出すための買収」自体が難しくなる
小さい買収なら株価インパクトは薄いけどDCF予測は安定する。大きい買収なら株価インパクトは大きいけど独禁法で潰れるリスクも大きい。

つまりブロードコムは、企業規模がデカくなったことで、逆にDCFの振れ幅要因である大型M&Aそのものを打ちにくくなってる、というちょっと皮肉な構造にあるんですわ。

巨大企業ほどM&Aで化けそうに見えて、実は規制の壁で身動きが取りにくくなる。結果としてDCFが逆に効きやすくなる。これが今のブロードコムのパラドックスです。

■ ORAとの対称構造

これをORAと対比すると面白い構図が見えてきます。

ORAはまだ時価総額が小さいから、大型買収を仕掛ける自由度が高い、だから振れ幅が出やすい。
一方ブロードコムは図体がデカすぎて、逆に振れ幅を出しにくい。

同じ「M&Aで転換を狙う企業」でも、規模によって振れ幅の出方が真逆になる。これがDCFを考えるうえで面白いポイントやと思います。

■ 自営業者投資家としての結論

DCFは理論の骨組みとして知っておくべきですが、それ単体で投資判断するのは危ないというのが実感ですわ。
特にRGTIやQUBTみたいな量子コンピュータ株、CBRSみたいなAI関連は将来利益の予測が不透明すぎて、DCFだけで判断するのは難しいね。
こういう銘柄にはテーマ性の強さや国策のラインに乗っているか、事業の成長性はどうかなど事実と数字の比較で総合的に判断するほうが良いかと思いますねん。

最後に問いかけです。
あなたの持ち株は、DCFで読みやすいタイプでしょうか?
それとも今まさに転換点にいて、読みにくいタイプでしょうか?

そこを意識するだけでも、企業を見る解像度はグッと変わってくると思いますわ。

SHO

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